「タイパ」という言葉が流行する世の中において、大切なものとは何だろうか?

 皆さんは”タイパ“という言葉をご存じでしょうか?最近の若者が重視する価値観を表す言葉で、「タイムパフォーマンス」の略だそうです。要するに、かけた時間に対する満足感を意味する言葉だそうです。たとえば、少しでもタイパをよくするために、映画やドラマを倍速で視聴するとか、本も、最初から最後まで読むのではなく、要点や核心だけ読むということだそうです。

 現代の世の中は、この”タイパ“という言葉が生み出されるほど、常に時間を気にしなければいけない忙しい生活を強いられているのでしょうか?私たちの生活は、技術開発が進み、昔にくらべ、確かに便利で快適な生活を手に入れたように思います。しかし、実は技術の進歩によって、世の中のスピードは速くなり、そのスピードについていくために、結果として処理しなければいけないことが多く、心に余裕の持てない生活を強いられているということなのでしょう。若者の間で、この”タイパ“という言葉が流行するということは、その象徴なのかもしれません。

 以下の稲城選恵氏の言葉は、そんな私たち人間の生きざまを的確に表現している法語だと思います。

 世の中に 最も度し難いものは 他人ではない この私

【意訳】世の中で、最もどうしようもない存在は、他人ではなく、この私


 この法語中にあります「度し難い」とは、”どうしようもない“とか”救いようがない“という意味の言葉です。私たち人間の生きざまとは、自分の勝手な解釈によって、無意識のうちに選り好み、自分が正義と信じていることが、必ずしも正しいとは限らない。また、良かれと思って一生懸命取り組んでも、その事が、必ずしも良い結果をもたらすは限らない。そのような「いのち」を生きています。

 だからこそ、自分自身を見つめる鏡(教え)と場所(仏壇の前)そして時間が大切なのだと思います。この時間は、生産性を重要視する現代の価値観から言えば”タイパ“の低い時間かもしれません。しかし、人間らしく生きるうえにおいては、とても大切な時間ではないかと思います。


皆福寺

創建800年 皆福寺 それは、 先人の記憶・思い・願いをとどめる場所 そして、その場所は、 今を生きる私たちの活力を得る場となる ~月に一度は、お寺で心の洗濯を!~