今年の流行語大賞『忖度』に想う

 今年の流行語大賞に「忖度(ソンタク)」という言葉が選ばれました。

 あらためて、辞典で言葉の意味を調べますと、「他人の気持ちを推し量る」という意味の言葉だそうです。

 私達の生活を振り返ってみますと、日々「忖度」しながら生きているのでは、ないでしょうか?

 例えば、困っている人を見たら、相手の気持ちに立って、少しでも手助けしてあげようとする行為も「忖度」です。ただ、「忖度」することで、良い結果をもたらす時ばかりではありません。良かれと思ってした行為が、かえって、大きなお世話となってしまう場合もあります。結果論で言うと、善し悪しについては、さまざまです。

 親鸞聖人というお方は、そのような現実の世界を


  『火宅無情の世界は、よろずのこと、

           みなもってそらごとたわごと、まことあることなきに』

    【意訳】まるで燃えさかる家のように激しくうつろいやすいこの世界

        は、すべてが嘘や偽り、絵空事であって、真実はないという言

        葉を残してくださっています。


そんな、不安定な世の中に生きているからこそ、私達は、日頃の生活の足下をしっかり見つめ、自分を支えてくれている様々なはたらきを気づく必要があると思います。私達は、普段、無いものを追い求めことが幸せにつながると思いがちです。しかし、自分の今ある生活にこそ、幸せが隠れているかもしれません。

 今年、105歳でお亡くなりになりました医師の日野原重明さんの言葉を借りれば、


 「誰しも幸福を望みますが、それを実感することにおいては、

                          きわめて鈍感です。」


 今の時代は、世の中のスピードも速く、現代人は、忙しい生活に追われて生活しています。

 そんな現代を生きる私達には、足下に鈍感になってしまっている心をリセットし、今の自分を支えてくれているものを発見する時間と機会が必要なのではないでしょうか?

皆福寺

創建800年 皆福寺 それは、 先人の記憶・思い・願いをとどめる場所 そして、その場所は、 今を生きる私たちの活力を得る場となる ~月に一度は、お寺で心の洗濯を!~