「お浄土」が表現する、お互いの個性を尊重する世界

 今から、二十ほど年前に発表された有名な曲に『世界にひとつだけの花』という歌があります。「ナンバーワンにならなくてもいい もともと特別なオンリーワン」という歌詞からはじまるこの曲は、多くの人々の共感を得て、空前の大ヒットとなりました。

 この曲を作詞・作曲した槇原敬之氏は、のちの新聞社の取材に対し『「ナンバーワンではなくオンリーワン」という主題は、「天上天下唯我独尊」(お釈迦さま生誕の言葉)という仏教の教えが念頭にあった』と語り、また、『仏説阿弥陀経』にある

  『青色青光 黄色黄光 赤色赤光 白色白光』
【意訳】青き色には青き光、黄なる色には黄なる光、赤き色には赤き光、白き色には白き光あり。

という一節が元になったとも語っているそうです。

 『仏説阿弥陀経』にあるこの一節は、人間の生き方をお浄土に咲く蓮の花にたとえた言葉です。この言葉は、人間は本来、互いにそれぞれが、それぞれの色(個性)を持ち、光り輝くべきであるということを表現しています。

 しかし、私たちの生き様の現実は、他人にはない、すぐれたものを持つことが、光り輝いて生きることであると勘違いをしています。ゆえに必死になって、他人よりも勝るものを手に入れようと努力しています。しかし、人はみな例外なしに、年老いておとろえを感じ、周りの協力なしには生きていけない存在です。他人にはない、すぐれたものと言って追求してみても、それは、しょせん比較の問題に過ぎません。結局のところ、本当に、永遠に光り輝くことはできないのです。

 このような他人と比較する心から解放されることがない限り、私たちは、人として本来の輝きを取り戻すことができません。そのためには、すべてのものは、つながり合って、共に生きる存在であることに気づくことが大切なのだと思います。

 たとえ大切なことであっても、他のことに気を取られてしまうとすぐに忘れてしまう私が、一人ひとりがお互いに支え合って生きているということを常に肝に命じるために、お念仏をを申しながら日暮らしをすること(これを「念仏生活」という)が、お浄土に咲く蓮の花のように、自分らしく光り輝いて生きることを実現する唯一の道なのだと、親鸞聖人が教えてくれているように思います。


皆福寺

創建800年 皆福寺 それは、 先人の記憶・思い・願いをとどめる場所 そして、その場所は、 今を生きる私たちの活力を得る場となる ~月に一度は、お寺で心の洗濯を!~